Category: ヒップホップ全般
目を離すな! この男、大旋風を巻き起こす予感あり!

サンフランシスコのベイエリア。
この地域のヒップホップ事情といえば、やはりまず思い浮かぶのが巨漢ラッパーE-40だ。
彼が率いるレーベル Sick Wid It Records は、これまで数々のラップアーティストを輩出してきた。その中に「NUMP(ナンプと読む)」というフィリピン系ラッパーがいたのをご存知だろうか?
日本ではあまり知られていないナンプ君だが、彼はこれまでに2枚のアルバムをリリースしており、特に2007年にリリースされたシングル「I Gott Grapes」は空前のローカルヒットとなり、「ハイフィ・ムーブメント」と呼ばれる新しい音楽ジャンルの火付け役ともなったのだ。


もともと彼はサウンドエンジニアとして働き始め、グリーン・デイやイギー・ポップなどのレコーディングに参加していた。そんな中、同郷のE-40と仕事をした際に、ラッパーとしてのスキルを認められ、見事デビューを果たしたという変り種だ。
そんな彼が下積み時代から暖めていた野望が、ついにこのたび現実になったのだ。
それは「アジア系アメリカ人ラッパー達のレコードレーベル設立」という前代未聞の野望だ。全米各地から才能あふれるアジア系ラッパー達がナンプの元に集結し、アメリカの音楽史上初となるアジア系ギャングスタラッパー達のレーベル「454 Life Entertainment」が発足したのだ。
まずはこのビデオを見て欲しい。
レーベル所属のアーティストが、自己紹介を兼ねて順番に自慢のラップフロウをアカペラで披露している貴重な映像だ。
Thai, IZ, Drew Deezy, and Nump
このレーベルの四天王となるのが、ナンプ(フィリピン系)、タイ(ベトナム系)、イージー(韓国系)、ドリュー・ディージー(サモア系)。
ナンプ以外の3人は、自らのギャング経験や、刑務所での服役経験などについてラップするハードコアでサグな猛者どもばかり。 特にタイに関しては、2003年ごろからアンダーグラウンドで活動しており、その名前をご存知の方も多いのではないだろうか。「アジア系ギャングスタラッパー」という肩書きが異色すぎたため、これまでくすぶっていた感のあった彼だが、ナンプという力強い後ろ盾を手にし、今後どのような飛躍を遂げるのかがとても楽しみだ。




彼らは、全盛期の No Limit Records を彷彿させるようなスピーディーなリリース間隔で、次々とYouTube上でPVを発表している。また、それらが決して低予算のものではなく、かなり良質なものばかりなのが驚きだ。さらに、ボビー・バレンティーノやフリーウェイなど、外部からの客演アーティストたちも多々招き入れ、作品に華を添えている。 彼らの豊富な資金力とそのハードワークさにはただただ脱帽するばかりだ。
彼らの作品の中で、個人的にひときわ好きなのが「We International」(PV下記参照)だ。 外部からのゲストとして、現在Gユニット所属のフリーウェイをフューチャーしたこの曲は、躍動感あふれるトラックに、刻みのいいマイクリレーが展開されているヒップホップファンにはたまらない出来栄えだ。
We International - Drew Deezy, Thai, IZ & Freeway
その反面、R&Bシンガーのボビー・バレンティーノが滑らかにフックを歌い上げる「I Don't See Nothing Wrong」(PV下記参照)は、メローな雰囲気漂うパーティーチューンで、決してハードコア一辺倒には偏らない彼らの器用さが垣間見れる良作に仕上がっている。
I Don't See Nothing Wrong - Drew Deezy, Thai & Bobby Valentino
レーベル発足後初となる待望の1stアルバム「As Real As It Gets」も遂にリリースされた。 所属アーティスト達の曲を収録したレーベルのコンピレーションアルバムになっている。 前述の2曲をはじめ、今話題のエレクトロ系ラップ的な楽曲も収録されていたりして、幅広い作品に仕上がっている。 このアルバムは、ここ日本でもAmazonやItuneなどでデジタルダウンロードでの入手が可能だ。
454 Life Entertainment - As Real As It Gets

次なるアジア系アーティストの発掘に余念がない彼らは、続々とニューカマー達がレーベル入りを果たしている。 また、他のアジア系ラッパー達との交流も盛んで、以前このブログでご紹介したことのある Far East Movment や Jimmi Boi が454製作のPVにカメオ出演していたりする。さらには、アジア系R&Bシンガーの発掘にも触手を伸ばし始め、レーベルとして更なるステップアップを目論んでいるようだ。
なにぶん過去に例のない「アジア系のギャングスタラップ」という未知の境界に踏み込んだ彼ら。無論その道のりは険しいが、彼らの挑戦はまだ始まったばかりだ!
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◎今日のひとこと◎
私の大好きな音楽ライター、丸屋九兵衛氏もナンプの大ファンだとか♪ o( ̄ー ̄o )
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